新規に事業を開始する際に、新たな法人を設立せずに、休眠会社の株式を購入してきて、商号を変更しその会社を使って事業をスタートすることも可能です。
休眠会社は、営業をしていないだけで登記簿上会社として存在しているからです。
ここでは、休眠会社を買う場合のメリット・注意点について記載いたします。
休眠会社を買うメリット
- 会社設立の資本金や登記費用が不要
新会社を設立する際に必要な資本金と登記費用を考えると、通常は、休眠会社の株を購入してくる方が(商号と本店移転の登記費用を考慮しても)費用を安く抑えることができます。
また、設立に要する約1か月間の期間も必要ないというメリットもあります。
- 預金口座や許認可をそのまま使える
預金口座や許認可も基本的には引き継ぐことができますので、これらの手間も省ける可能性があります。ただし、許認可につきましては、一定の制限がある場合があります。
- 設立年の古い会社を使える
休眠した会社を使うことで社歴の長い会社であると思われる可能性があります。
また、預金口座や許認可とも絡みますが、例えば、宅建業免許などの場合、取引において登録の番号の古さが信頼につながる場合もあるため、それだけで購入のメリットがあります。
- 設備や不動産も手に入れることができる。
休眠している会社が、仮に設備や不動産などの資産を保有していた場合、当然、それらの所有権も獲得することができます。
ただし、休眠している状態ですので、目に見えないノウハウや取引先など「無形の財産」は既に消失してしまっていると考えられます。
休眠会社を買うリスクと注意点とは?
- 繰越欠損金の活用を狙った購入は、制限されほぼ活用できなくなった。
赤字の会社は、税務上、繰越欠損金として一定期間赤字を繰越し、単年度の黒字と相殺できる制度があります。
以前は、この繰越欠損金を引き継ぐ目的で、休眠会社を購入する手法が流行っていましたが、現状は、税制改正により、殆どのケースでこの繰越欠損金は引き継げなくなっています。
節税目的のみで休眠会社の買収を実施するのは実質的に困難です。
- 簿外債務に注意
購入する休眠会社に未納税金などの簿外債務などがあった場合、もれなくその債務も引き取ってしまいますので、購入する際には、入念な調査が必要になります。
最悪のケースは、損害賠償リスクも背負うことになります。
また、簿外債務とは異なりますが、その休眠会社が銀行のブラックリストに載っていたことがある場合、その会社では銀行融資が受けられない場合があります。
- 創業融資は利用できない可能性が高い
会社を設立したての方は、日本政策金融公庫などで「創業融資」の制度を受ける場合があります。ですが、休眠会社の買収では、新規開業と扱ってもらえず、この融資制度は利用できない可能性が高いと思われます。通常の融資を受ける場合でも、過去の決算書の提出が求められますので、購入の際、最低限、過去の決算書や帳簿書類が保存されていることを確認しておいてください。
- 税務上の届出に注意
例えば、「消費税簡易課税制度選択届出書」が過去に出ていた場合、取り下げない限り、効力が続いてしまいます。
そのことに気が付かず、税務上不利益を被ってしまうリスクも考えられます。
また、青色申告の承認も取り消されている場合がありますので、確認が必要になります。
まとめ
休眠会社を買う場合の注意点についてご理解いただけましたでしょうか。
休眠会社購入をお考えで、そこにメリットがあるかないかご不明な方は、休眠復活に詳しい税理士にお問い合わせください。