この章では、NPO法人と消費税に関して解説いたします。
Contents
NPO法人は消費税の納税義務を負うか?
そもそもNPO法人は消費税を支払う必要があるのか、解説いたします。
消費税法上の考え方
消費税法では、「事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」につき、消費税が課されることとなっております。
結論は、法人が行う活動は、例えNPO法人であっても、全て消費税法上の「事業」に当たるため、NPO法人が行う全ての事業につき、消費税の対象となるのが原則です。
NPO法上の、特定非営利活動かその他の事業か、という区分は消費税法上では考慮されない点に注意が必要です。
消費税がかからない取引について
消費税がかからない取引について以下に列記いたします。
事業者が行う取引は、全ての消費税の課税対象となるのが原則ではありますが、中には、消費税法の規定で非課税(又は不課税)となるものも存在します。いくつか例を列記いたします。
消費税 | 課税対象か否か |
寄付金収入 | 対価を得ていないため不課税 |
補助金収入 | 対価を得ていないため不課税 |
土地の譲渡・貸付 | 非課税取引 |
介護保険収入 | 非課税取引 |
会費収入 | ものによっては対価性がないと考えられるため不課税 |
NPO法人の消費税はいつから支払う必要があるか?
NPO法人は消費税を払う必要があるのか。
支払う場合はいつから払う必要があるのか説明します。
基本的には設立後2期は免税となる
消費税の納税義務は、基準期間における課税売上高が1000万円を超えた場合に生じることになります。
基準期間とは、原則として、2年前の課税期間を指すため、設立2年間は、基準期間のない法人として、消費税を納める義務が免除されます。
設立2年間の免税の例外
免除の例外は以下の2つになります。
- 特定期間(前事業年度開始の日以後の6か月間)の課税売上高及び給与等の金額が1000万円を超える場合
- 課税事業者選択届出書を提出した場合、またはインボイス登録した場合
本則課税・簡易課税
消費税の納付税額は、①「売上に係る消費税額」から②「仕入に係る消費税額」を控除することで求めることができます。
この原則的な計算方法を、本則課税と呼びます。
この他、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者には、簡易課税制度を選択することが認められています。
簡易課税制度とは、「売上に係る消費税額」に、業種により定められたみなし仕入率を乗じて計算した金額を預かった消費税額から差し引いて差額を納付する方法で、文字通り簡易的な計算が可能であり、納税額も本則に比べて少なくなる傾向があります。
なお、簡易課税制度の適用を受ける場合には、事前に届出が必要になります。
国等の特例
NPO法人が消費税の計算上注意すべき国等の特例について解説いたします。
制度の概要
消費税法においては、国、地方公共団体、公共・公益法人等(国等という)の補助金・寄付金・保険金などの対価性のない収入(特定収入)が多い法人に対してのみ特別に適用される特例規定が存在します。
これらの法人は、通常の計算に基づく仕入税額から、特定収入を原資として行った課税仕入れに係る税額について、除外するというものです。
消費税の納付税額は、①「売上に係る消費税額」から②「仕入に係る消費税額」を控除することで求めることができますが、国等は、補助金等の対価性のない収入(消費税を預からない収入)を主な財源としています。
このような対価性のない収入を原資として課税仕入れを行った場合には、①「売上に係る消費税額」が生じず、②「仕入に係る消費税額」だけが生じることになり、納付税額がマイナスという計算になります。
つまり、②の金額の還付を受けることになり、補助金等の他に②の消費税相当額の還付まで受けられる結果となってしまいます。
補助金等を財源とした仕入は、最終消費的な性質を有することを考慮して、②の還付を認めない制度が存在します。
なお、簡易課税制度を選択している場合には、この規定は適用されません。
計算方法
国等の特例の計算方法は、複雑であるため、ここでは詳細は省きますが、以下のURLをご参照ください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/shohizei_r03.pdf
まとめ
NPO法人と消費税の関係について記載いたしました。
NPO法人も消費税の申告義務を負いますし、国等の特例計算が絡むと複雑な計算が必要になります。
NPO法人の消費税の申告書に対応できる税理士に依頼するようにしてください。
NPO法人の寄付に強い税理士へのお問い合わせはクライサー税理士法人へ。