NPO法人は税金が優遇されていることをご存じの方は多いと思います。
具体的にどんな税金が優遇されるのか、株式会社などと変わらない部分もあるのかをこの記事で解説していきます。
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法人税がかかる事業に関して
NPO法人は「収益事業」を行った場合にのみ法人税が課税されます。
NPO法人が収益事業を行うことに違和感を持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、利益の分配(配当)をしてはいけないだけなので、商品を仕入れて売ったり、不動産を貸したりしても問題ありません。
「収益事業」は34の業種をいい、下記に示すものになります。
- 物品販売業
- 不動産販売業
- 金銭貸付業
- 物品貸付業
- 不動産貸付業
- 製造業
- 通信業
- 運送業
- 倉庫業
- 請負業
- 印刷業
- 出版業
- 写真業
- 席貸業
- 旅館業
- 料理飲食業
- 周旋業
- 代理業
- 仲立業
- 問屋業
- 鉱業
- 土石採取業
- 浴場業
- 理容業
- 美容業
- 興行業
- 遊技所業
- 遊覧所業
- 医療保健業
- 技芸教授業
- 駐車場業
- 信用保証業
- 無体財産権の提供業
- 労働者派遣業
これらの事業を継続的に事業場を設けて行っている場合には、株式会社などと同様に法人税が課税されます。
どのような場合に継続的と判定されるのか、事業場を設けて行われる場合の具体例を見ていきます。
継続的にとは
事業年度の全期間を通じて行われるもののほか、不定期で合っても反復して行われるもの、準備期間が長期にわたる場合にはこれらを含みますのでご注意ください。
法人税法の通達に具体例がありますので引用します。
- 例えば土地の造成及び分譲、全集又は事典の出版等のように、通常一の事業計画に基づく事業の遂行に相当期間を要するもの
- 例えば海水浴場における席貸し等又は縁日における物品販売のように、通常相当期間にわたって継続して行われるもの又は定期的に、若しくは不定期に反復して行われるもの
引用元:第1款共通事項
事業場を設けて
常設の店舗や事務所がある場合のみでなく、臨時に設置されるものや用途変更をして使用する場合も含まれます。
移動販売や移動演劇興行等のように、その事業活動を行う場所が転々と移動する場合も該当します。
ですから、34業種に該当する場合は法人税が課税される可能性がかなり高いです。
ただし例えば下記のようなケースでは法人税の課税対象から外れる可能性があります。
- もっぱら会員向けに活動報告書を販売した場合(もっぱらは8割が目安)
- NPO法人が行うバザーで年1,2回程度開催されるもの
上述のように一定の場合には法人税が課税されない可能性もありますので、税理士等の専門家にご相談されるのをお勧めいたします。
法人税の税率に関して
法人の税率は中小法人と変わりありません。年の所得800万円以下の部分には15%、それを超える部分に関しては23.2%の税率が課されます。
税率の部分で優遇があると誤解されている方もいらっしゃいますが、実は変わりありません。
法人住民税の均等割りについて
株式会社などは、法人が存在するだけで黒字赤字に関わらず法人住民税の負担があります。
自治体によって異なりますが、東京都では70,000円の納税義務が毎年生じます。NPO法人も基本的には同様ですが、収益事業を全く行っていない場合にはこれが免除される可能性があります。
自治体によって取り扱いが異なるケースがあるので、免除してくれるかを事前に確かめておきましょう。
中間申告に関して
NPO法人は法人税、法人住民税、事業税の中間申告の義務がありません。ただし消費税は中間申告の対象となります。
相続税・贈与税に関して
NPO法人が相続税や贈与税が課税されることは原則ありません。
そもそもこれらの税金は個人に対して課されるものになりますので、株式会社なども同様の取り扱いになります。
ただしNPO法人の場合には、その遺贈や贈与により被相続人や贈与者などが経済的利益をうけたと考えられる場合には、NPO法人を個人とみなして課税されるリスクがありますのでご注意ください。
なお相続又は遺贈により財産を所得した方が、特定のNPO法人に寄付をした場合にはその寄付をした財産の価額が相続税の課税価格から除外される規定もあります。
消費税に関して
株式会社などと同様で、消費税の納税義務がある場合には納税が必要です。
NPO法人に特有の優遇規定が存在するわけではありません。
ただし消費税の納税額の計算において、株式会社などとは異なる部分がありますので、ある程度NPO法人に慣れている税理士等にご相談されることをお勧めします。
印紙税に関して
売上代金に関わる金銭の受取書(領収書やレシートなど)や有価証券の受取書には、一定の金額を超える場合には金額に応じた収入印紙の貼り付けが必要となりますが、NPO法人はこの義務が免除されています。
収益事業に関わる場合でも同様となります。
ただし契約書等に関してはこの免除規定がありませんので、全く印紙税がかからないというわけではないことをご留意ください。
登録免許税に関して
法人は設立する際に登記が必要となります。これはNPO法人も同様です。
しかしNPO法人は設立時の登録免許税の課税範囲に含まれていないために課税されません。
不動産を登記したりする際には登録免許税がかかりますので、こちらもまったく登録免許税がかからないわけではありません。
その他の税金に関して
不動産所得税、固定資産税、自動車取得税、自動車税等も自治体によっては減免がありますので、自治体にご確認されるのが良いです。
まとめ
NPO法人の税金に関してご理解いただけましたでしょうか。
株式会社等に対して優遇されているものが多いです。
ただ実務上は収益事業の判断が難しく、法人税の課税の対象になるのかを個々に検証していく必要があります。
広く社会一般の利益のために活動するはずの団体が、正しく納税ができていなかったときの社会的なバッシングはより大きくなるでしょうし、活動そのものに影響が出る可能性もあります。
私達クライサー税理士法人が、豊富なNPO法人の顧問経験をいかして皆様をサポートさせていただければ嬉しいです。是非お問い合わせくださいませ。